やがて俺の周囲、家族連れの観客達もビニールシートを畳んで立ち上がり、わらわらと隣の体育館様の建物へ向かい始めた。それをステージ上の三人は意に介する様子もない。「レイラ」は依然として続いている。
建物の陰気かつ狭い入り口の右脇には「クラプトン会場入り口」などとダンボール紙に汚ぇ字でマジック書きされた急拵えの看板が掲げられており、そこから中へ入れば果たして本当に体育館で、がらんとだだっ広くて、椅子もなくて、薄暗くて湿っぽくて、既に気の早い観客の何組かが場所取りを始めていた。ここで本物のクラプトンが演奏するのだろうか?とすれば、やはり先ほどの三人は偽者だったのか?ところが面妖な事には、せっかく早く来たというのに場所取りをしている奴らときたら常識的に考えてステージと目される正面奥の演壇の前には陣取らず、寧ろステージから可能な限り離れた館内の隅っこなどにちんまりと居を構え、まるで気の進まない講演会にでも来たかのように演者の視点から出来るだけ目立たないところで居眠りでも決め込もうとしているが如くであったのだ。このため演壇の前だけがぽっかりと奇妙に空き、そこへは誰も行きたがらない。そうこうしてる間にも隅っこはみるみる埋め尽くされ、行き場を失った俺、やむなく演壇正面の空いたスペースに体育座ったのである。
程なくして、ぞろりと演壇脇より楽団が現れた。およそ二十人のブラスバンド。誰も拍手しない。あどけなさを残す面持ちの構成員は何れも中学生ぐらいの年齢と推定され、学生服を身に纏い、要するに早い話が何処かの中学校のブラスバンド部である。無論、クラプトンのクの字もない。
そしてブラスバンド部の演奏が始まった。その演奏たるや、それなりに纏まっていて例えば先刻のクラプトン、ブラムホール、トラックスの演奏などと比べても遥かに統一感が有って決してダラダラとしていなかったし、何かを伝えようとする懸命さすら感じ取られ、中学生ながら大したものだと感心することしきりであったけれど、いかんせん、眠い。どういうつもりなのか?とにかく眠たくなるような演奏ばかりを彼ら彼女らは延々と展開するのだった。例えば「It’s a small world」なんてぇのも演奏するが、その曲とは一聴して分からぬ程にテンポを落とし、音量と音数とを極端に抑え、それはそれで哀愁があってホロリとさせられるものもあったけれども、それよりも何よりも眠い。嫌がらせのように眠い。まるで眠れと云わんばかりである。そんな按配で、俺は知らぬ間に船を漕ぎ始めていた。
「よしっ!子供が寝たっ!」
まどろんでいた俺は誰かの走った声でハッとした。顔を上げると一人のオヤジが猛然と立ち上がり、演壇近くの非常口へと駆けて鉄製のドアを勢いよく蹴り開け、そのまま表へ踊り出て行ってしまうではないか。すると、
「俺の子供も寝たっ!」
「俺もだっ!」
それを合図としたかのように他のオヤジ達も次々と立ち上がり、非常口に向かって駆け始める。何だ?子供が寝たから何だと云うのだ?居ても立ってもいられなくなった俺は慌てて彼らを追う。
非常口から館外へ出ると、そこは何故だか広大なアスレチック地帯。いきなり明るいところへ出て一瞬の眩暈。地平線が霞んでて。
「よっしゃっ!行くかっ!」
俺の後から出てきたオヤジが一人、声を上げた。振り返って見ると、ついぞ先刻まで屋外ステージでパラピロペロペーとやっていたクラプトン。近くで見ると全くの別人で、ただの角刈りのオヤジである。
「い、行くって?」
「あ?知らねぇのかよ若侍?このアスレチックを越えたところで本物のクラプトンがコンサートをやるんだよ!」
「そ、そんな馬鹿な・・・」
「馬鹿も馬糞もあるか!子供も寝かしつけたことだし、とにかく俺は行くぜ!折角ここまで来たんだ!ついでにアスレチックも楽しまねえとな!ひゃっほう!」
と言うが早いか、偽クラプトンは目の前のあのほらなんというか滑る部分がローラーになっているローラー滑り台みたいなのあるじゃない?を勢いよく滑り降り、一瞬にして視界から消えていってしまった。
「あっ!待ってっ!」
それを見、つい反射的に偽クラプトンを追ってしまった俺、激しく後悔。滑り台を滑り落ちる体は今やどんどんと勢いづき、もはや戻れない。
それから三時間ほど経過したろうか?俺は無数のアスレチックを越えた。滑り台を降り、縄梯子を攀じ登り、ジャングルジムを抜け、川を渡り、谷を渡った。しかるに行けども行けども本物のクラプトンには辿り着かない。偽クラプトンは最初のローラー滑り台を滑り終えた地点で地面に這いつくばり、「こ・・・腰を痛め・・・た・・・・」などと呻いて動けぬ様子であった。全体、どうしてこんな事になってしまったのだろうか?
「ああ・・・いやだないやだな・・・・・」とつぶやきながら、尚も地平線は霞んでい、照りつける陽光は依然として容赦が無い。
俺は、もう死んでしまうのかもしれないなあ。
おわり
テーマ:主婦のひとり言 - ジャンル:日記
- 2009/07/03(金) 17:15:52|
- 官能小説家を目指したはいいが挫折し、
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今朝方、愚妻から言われるまで気付かなかったのだが今日は結婚記念日なのだった。九回目の。
恐ろしいことだ。愚妻の前の結婚が八年間だったからつまり、記録を更新してしまったじゃあないか。前の旦那はプロのベーシストだった。今や地元四日市で音楽と自由とを満喫しておられるらしい。全く、とんでもないものを俺に押し付けておいて自分一人だけ狡いと思う。いっそのこと八年ずつ交代で面倒を見るようにして貰えないだろうか?
ま、とにかく今日は帰りにコンビニにでも寄ってハウスワインかなんか買って帰ろう。お前らの貧しさに!乾杯!!

テーマ:恋する楽しさを味わいたい - ジャンル:恋愛
- 2009/07/02(木) 08:34:03|
- ウドンのような日々を送っている。
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本日のマンデーナイトは出張のためお休み致します。小生のステージなど誰も期待していないとは思いますが念のため。尚、schueさんのステージは予定通り展開されるものと存じます。ていうか、そもそもがschueさんのマンデーナイトだっつうの。
今夜は出張ついでにデートです。
- 2009/06/29(月) 15:54:37|
- 破滅的な弾き語りに溺れ、
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エリッククラプトンのコンサートへ行っていた。
場所は遊園地の、あのほら仮面ライダーショーとかのアトラクションをやるような屋外ステージで炎天下。こんなところで六月初旬の蒸し暑い日中に俺はアスファルトの上、体育座りをしながらエリッククラプトンを些かへたばりつつ待っていたのだ。なぜに体育座りかと云えば、座席が用意されていなかったからである。他の観客は家族連れが多く、ビニールシートなんか広げて弁当なんか広げて半ばピクニック気分にクラプトンを待っている。が、やはり暑いのだろう。幼い子供は泣いている。
そんな案配で三十分、照り返す熱射に晒され続け、さすがに気分が悪くなってきた矢先、漸くクラプトンが現れた。背中を丸め、ストラトキャスターを抱え、や、どもどもなんてペコペコ客席に会釈しつつステージ脇の階段から登ってくるクラプトン。なんだ、その卑屈さは?それに続くバンドメンバーはデレクトラックス、ドイルブラムホール2。や、どもどもと、お前らもか。それからギターをアンプへ繋げ、セッティング、チューニングなどを各々始めた三人。客の前で。それが約十分。クラプトンのコンサート初体験である俺の心中は次第にざわざわし始めたが、しかるに俺以外の観客どもは勝手知ったるもので寝転んだりして余裕の表情でいて。ときおり飛ぶ「はよやれー!」などと冗談交じりの野次。俺はますますざわざわざわ。
そこへ、何の前触れもなしに聞き慣れたイントロリフが突如として鳴り響いたのだった。
「レイラ」だ。いきなりステージ中央でクラプトンがおっぱじめたのだ、他の二人に断りもなく。まだセッティングが充分に済んでなかったのであろう、クラプトンの傍らで客席に背を向けアンプの前でもぞもぞやっていたブラムホール2が慌てて前を向き、コードを弾き出した。可哀相に、音色はヘナヘナのままだ。その反対側、デレクトラックスはお構いなしにセッティングを続けている。
やがてトラックスも加わって三人での演奏となった。しかるにベースは?ドラムは?が、それよりもなによりも釈然としないのは三人の演奏具合であって、クラプトンはパラピロペロぺーと例の有名なフレーズを弾いている。弾き続けている。ブラムホールはそのバックでコードを弾いている。弾き続けている。それを向こうにトラックスは取って着けたような、別に弾いても弾かなくてもいいような適当なソロを弾いている。弾き続けている。
しかし、ずっとそればっかりなのだ。
展開も何も有ったもんじゃない。歌にも入らない。ただひたすらイントロのパラピロペロぺーを繰り返すばかりで、レイラのイントロをネタに何となくジャムってますみたいな態度がありありで、それでもこの三人ならばそれなりの感動的な演奏になる筈だったけれど、これがまた下手と言ってしまっては失礼だから言い方を変えると即ち、やる気というものが全く感じられない、いいかげん極まりない演奏なのである。
演奏だけではない。
やがて俺は異変に気付いた。三人のルックスが、変だ。というのも、ブラムホールが何故か右利きである。トラックスがスライドを弾いていない、のは有り得る事として、横幅が異様に広い。肝心のクラプトンはというと、本人に見えなくはないものの背中が卑屈に丸まってい、にかっと笑って見せた前歯が一本抜けている。
はっきり云って、見ようによっては三人とも全くの別人物である。極論すれば日本人のようにも見える。俺は慌てて手元のチケットぴあのチケットを見直した。チケット代千五百円。安い。こんな値段で本物のクラプトンを観られるだろうか?ところがチケットには堂々と「エリッククラプトンのファミリーコンサート」なんてフォントサイズ十四の明朝体で大書されており、クラプトンのそっくりさんコンサート、或いはクラプトンのコスプレコンサートなどとは書かれていない。うーむ、これはこれは・・・・なんて云う間、「レイラ」は二十分あまり続いている。ブラムホールはお疲れ気味の様子。トラックスは依然として適当なソロを弾きながら、さすがに「いつまで演らせんねん」と機嫌の悪くなってきているのが見て取れる。ただ一人、クラプトンだけがやけに嬉しそうだ。一本欠けた前歯を露に相好を崩しニコニコとご満悦。そうして観客はというと既にステージなど完全無視の体勢へと入りつつあり、方々で勝手に歓談などしてるもんだからざわざわざわざわと騒がしく子供達は走り回っている。それを見て俺は更に心中ざわざわざわざわざわ、暑い。とにかく暑い。もう帰ろうか?そこいらでビールでも売ってないか?辺りを見回す。
見回すと、ステージ右隣には巨大な体育館様の建物。そこへ今まで炎天下に寝転がっていた観客の数人がばらばらと、肩を怒らせ入ってゆくのが見えた。
つづく
テーマ:(o´Д`)ハァ。。 - ジャンル:日記
- 2009/06/24(水) 12:09:26|
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さんじゅうくどのっ♪とろけそうなひっ♪
・・・・そんな日は永遠に来て欲しくない。
雨上がりの高温多湿で誰もが誰かをむやみやたらと殴りたくなった昨日の夜は仕事関係の呑みで美味しい魚料理を前に聊か逆上し阿呆のように焼酎を飲み倒し、で、こりゃ泥酔したろう、さぞ泥酔して楽しいライブが出来るだろうと心中秘かにほくそ笑んでいたらば茨木に着く頃には中途半端に酔いが抜け、今ひとつ釈然とせぬままvaughanの扉を開くと果たしてschueさんとたくろうがジャムってた合奏してた。いつになくポッキーの影が薄かった。雨上がりのマンデーナイト。しかし、いつのまにかレイニーマンデーナイトに変わったようだ。
俺のステージでは最後にschueさんに入って頂いた。しかもギターで。俺は歌ったのだ、schueさんにバッキングをして頂いて。お陰で不思議と優しい気持ちになり、それまで日中の高温多湿のせいで誰かを殴ってばっかりだった俺は一人悔い、男泣いて、それから酔い直したのである。ステージも去ることながらアフターステージに皆と酔っ払って遊ぶのが何より楽しいんだ。何だか「男」な夜だった。これからは誰かを殴る代わりに誰かを掘ろう。
1.Good dreams
2.Worried life blues
3.Close to you
4.花盛りの森
5.Wonderful tonight(with schue san)
6.Hometown blues(with schue san)
ところが、なんと、最後にポッキーが復活したのだった。それも、ものすごい勢いで。あんなに薄かったのに。
テーマ:ライブ - ジャンル:音楽
- 2009/06/23(火) 18:07:28|
- 破滅的な弾き語りに溺れ、
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そんなわけで昨夜は放出Hot Brothersにて巻きjacobライブ。
なんというか、イエイ!としか言い表しようのない夜だった。遺影!!京グラの皆、ex京グラ(と云わなければならないのがちょっと寂しいぜ)のTAROちんが素晴らしかったのは勿論の事、久しぶりにハーモニカ日本一のこにっさんともジャムれたしね。
以前にこにっさんとジャムってたのは何時だったろうか?確か2005年ぐらいの谷六ページワンのブルーズセッションでの事で、当時、まだ俺はベースを弾いていたし、こにっさんは日本一になる直前の頃だったと思う。その後、自分は真面目くさってブルーズやるのがバカバカしくなり、その種の道をアッサリと放棄してしまったのだったが、そんな個人的な経緯はどうでもいいとして懐かしい人と再びヤれるのは楽しいもんだね。はは。何だか昔の女ともヤリたくなってきたぞ。あーっ、勃ってきた。最初の女だけは嫌だけど。あーっ、萎んできた。
Set list:
1.Hometown blues
2.嫌んなった
3.黒く塗りつぶせ
4.My baby
写真は続きをどうぞ
[性欲が強すぎるんですよ]の続きを読むテーマ:音楽のある生活 - ジャンル:音楽
- 2009/06/21(日) 13:28:13|
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